三田にある慶應義塾大学の旧図書館の1階にある喫茶「八角塔」は、喫茶としては2021年4月にオープンなので、昭和レトロとかアンティークどころか、令和オープンのカフェなのですが、この喫茶が入る建物は、1912年竣工の歴史と伝統のあるゴシック建築で、国の重要文化財に指定されています。
立地と歴史
慶應義塾大学旧図書館は、曾禰達蔵・中條精一郎の設計によるゴシック様式の建物です。1912年(明治45年)4月、慶應義塾創立50年記念の寄付金によって建てられました。その瀟洒で華麗な外観から、慶應義塾のシンボル的存在として親しまれてきました。
しかし、1923年(大正12年)9月の関東大震災で大きく損傷し、一度解体されたのです。また、1945年(昭和20年)5月の空襲で、本館部分を全焼、大きな被害に遭いました。
戦争や震災で損傷をしたものの、そのたびに修復を重ねて建物は守られ、1969年(昭和44年)には、国の重要文化財に指定されたのです。
八角塔はこの通路の左側にあります。▼
1982年(昭和57年)に図書館新館が開館したことに伴う改修工事で、戦後形状が大きく変わっていた屋根を復旧し、2016年から2019年(平成28-30年)にかけて免震化工事の際に外装も修復され現在に至ります。
現在は、図書館機能はなく、福沢諭吉記念慶應義塾史展示館として使われています。喫茶八角塔はその1階にあります。
店構え
見ての通り、今まで記事にしてきたどの喫茶店よりも威厳があり且つ上品で華麗な佇まいです。赤煉瓦と花崗岩による壮麗な外観は、約110年前の建設当時の姿を留めており、悠久の時を超えて現在も慶應義塾大学の歴史と伝統を見守る存在です。
店内
内装は新しくなっている部分がほとんどですが、その外観の印象を損なうことなく、重厚で荘厳な趣を見せています。
お店の入り口にある店名サインは、旧図書館へのリスペクトを込めて本の上に。よく見るとゴシック建築の本や瀧口修三などが積み重なっています。▼
店名がこの建物の右側の塔の部分「八角塔」であるように、店内にも八角形があしらわれています。
まずテーブルをよくみてください。中央の大きいテーブルも各々のテーブルも全部八角形です。そして中央の大テーブルの上の天井も八角形に折りあげられています。
わかりにくいのですが、実は床も組木で大きな八角形になっているんです。▼
窓の向こうには銀杏の大木が揺れています。▼
この奥がまさに八角塔の真下の部分です。上階へ上がる階段がありますね。奥の部屋の床も八角形に組み木されています。▼
メニュー
メニューはこのような図書カードのようなスタイルです。チョコレートサブレはあの蔵前にある有名な蕪木のもの。それだけではありません。マカロンはあの千葉にあるチョコレートのくにおかです!
どちらも大好きなお店です。それにしても相当なこだわりですね。▼
本日のスイーツは何か尋ねると”プリン”だと言うので、これはもうプリンしかないと思いました。
オーダー
こちらが本日のスイーツのプリンです。非常にオーソドックスな正統派のプリンです。生クリームがたっぷりでやや硬めのプリンでした。
ここのクラシカルな雰囲気には正統派なプリンがとってもよく似合います。▼
一緒にオーダーしたのは、アイスカフェラテです。たっぷりなカフェラテと可愛いプリンで大満足なカフェタイムを過ごすことができました。
ポイント
いつも訪問している昭和レトロな喫茶店とはだいぶ趣が違いますが、重要文化財でいただく珈琲の味は格別なのです。
私にとって慶應義塾大学は母校でもなんでもありませんが、このような歴史的価値のある建物を、きちんと保存管理しているところが素晴らしいなと思います。
実は、オープンした時ここのカフェはCafe Tempusと言う名前でした。それが、今回再訪したら「八角塔」に変わっていました。調べてみると運営会社も変わっていませんし、内容はほぼそのままで店名だけが変わったみたいです。
慶應義塾大学と言えば愛校心溢れるOBOGの方々がたくさんいらっしゃるので、もしかしたら、ラテン語で時を表すTempusなんてのより、日本語でこの旧図書館らしい名前にしたほうがいい!!なんて声があったのかななんて想像してしまいました。
結局のところ、なぜ開店まもなく店名が変わったのか真実はわかりませんが、「八角塔」のほうが確かにしっくりきます。
基本情報
店名 | 八角塔 |
住所 | 東京都港区三田2丁目15−45 MAP |
最寄駅 |
JR田町駅徒歩8分、都営地下鉄三田駅徒歩7分、都営地下鉄赤羽橋駅徒歩8分 |
定休日 | 日祝 |
営業時間 | 10:00 – 18:00 |
禁煙・喫煙 | 全席禁煙 |
営業時間、定休日などは変更になる可能性があります。