勝どき橋(勝鬨橋)
築地から月島や勝どき方面へ、隅田川にかかる「勝どき橋」は1940年(昭和15年)竣工の、日本で最大規模の可動橋です。正式には「勝鬨橋」ですが ”鬨” が常用漢字に含まれないため正式名も ”勝どき橋” と表記されています。
建造から80年以上経ち今や1日に何万台もの車が通る現役の道路橋ですが、国の重要文化財(建造物)に指定されていますし、橋を跳ね上げる機械は機械遺産に認定されている、歴史的、技術的にエポックメイキングな橋です。
橋桁を跳ね上げる(跳開)るとその開閉に20分くらいかかるらしく、もし晴海通りを20分も止めたら都心が大渋滞してしまいます。そのため定期的に跳開されていたのはモータリーゼーションが始まった1964年頃まで。最後に跳開したのは1970年だそうです。
TVや映画のロケ地としてもよく使われ知名度もあり可動橋だというのも知っているけど、実際に開くのを見たことがある人はもう殆どいない、それが勝どき橋です。
橋脚内見学ツアー
この勝どき橋の築地側のたもとには「かちどき 橋の資料館」という、勝どき橋の資料や関連情報を展示・公開する入場無料の施設があります。
そしてこの資料館では毎週木曜日に「勝どき橋 橋脚内見学ツアー」という実際に勝どき橋の橋脚内に入り、橋桁(はしげた)を開閉する機械などを見学する企画が行われています。
パンデミック中は休止していたのですが、2023年1月から見学ツアーが再開されました。
そこで以前見学した際の写真を使い、この橋脚内見学ツアーの様子を紹介します。なお、パンデミック前に実施された見学ツアーなので、現在の見学ツアーとは細部で異なる部分があるかもしれません。
この見学ツアーの料金は無料ですが、1回の参加者は10名程度まで。それを超える場合は抽選になります。さらに年齢的には小学生以上(小中学生は保護者同伴)、体重は100kg以下、身長は110cm以上という安全確保上の制限があります。
日時や申し込み方法など詳細はこの記事の最後で紹介しています。
勝どき橋の外観
見学ツアーは毎週木曜日の10時からと13時30分から。各回とも約90分かかります。
少し早めに到着して勝どき橋の外観を見ておくと、見学ツアー時の理解が早まります。
▲これは築地側から隅田川対岸を見たところ。橋の全長は246m。自動車ならあっと言う間ですが歩けば3分くらいかかります。
月島は大江戸線が開通したし、晴海は築地大橋も出来たし、以前とは交通の便が向上しています。でも昔、晴海でモーターショーが開催されていた頃は築地の駅から勝どき橋を渡って晴海まで延々歩いたんですよね、
▲隅田川の川下を見たところです。
すぐ川下に築地市場跡と晴海を結ぶ築地大橋が見えます。築地大橋ができるまでは勝どき橋が隅田川の最下流の橋でした。
▲無骨な鉄骨アーチが戦前な感じでいいですねぇ。
1940年、太平洋戦争直前ですがすにで日中戦争は始まっていますし、ヨーロッパではすでに第二次世界大戦が始まっています。そんな時代ですから ”勝どき” なんていう物騒な名前が付けられたのでしょう。
▲これは勝どき側から築地側を見たところ。戦前の設計なのに歩道が広くて歩行者も安心して渡れます。
写真でその歩行者の先に見える建物が運転室。橋の上げ下げの制御を行う場所で、ツアーではその内部も見学します。
また写真のこの辺りには東京タワーとスカイツリーの両方が見えるスポットがあります。
▲橋の中央部です。
本来ならここから橋桁が左右にガバっと開くのですが、今はロックされています。
隙間が開いているのでちょっと大きな車が通ると身体に感じるくらいに揺れます。
▲これは橋の蝶番にあたる部分。
写真で右側が固定されている部分、左側が跳ね上げります。
▲橋の欄干にはこんな装飾が。
閉じている時の勝どき橋です。
▲運転室の手前、陸側にはかつて信号機もあったようです。もう橋が開閉することもないのでトマソン化していますが。
この信号の先からは橋桁が跳ね上がります。
▲歩道の足元には丸い金属でマーキング。
橋を開閉する際、歩行者がここで止まって開閉が終わるのを待つための目印だそうです。
かちどき 橋の資料館
橋の外観を見ているだけで時間が過ぎてしまいますが「橋の資料館」にも多くの見どころがあるので時間には余裕をもって到着したいです。
▲築地側の橋のたもと「勝どき橋西」交差点の角に建っているのが「かちどき 橋の資料館」です。
橋桁を開閉するためのモーターに電力を供給するための変電所の跡地を利用しています。
▲資料館の中にはこのような模型もあって、実際どのように開閉していたのか分かるようになっています。
▲橋桁の重さは片側で約900トン。そこに約1000トンの重りを付けてバランスを取りながら開閉する仕組みなのだそうです。
見学ツアーでは運転室の下に見える重りがある部屋も見学します。
▲左右に見える丸い大きな機械がモーター。
これを回して900トンの橋桁を跳ね上げるのですが、重り(カウンターウェイト)が付いているので900トンをこのモーターで動かす訳ではなさそうです。パワーは150馬力。ただトルク勝負なところもあるので、たとえ150馬力でもトルクたっぷりなモーターなら十分なのでしょう。
▲日本全国の可動橋一覧。実際にはもっと沢山あるみたいです。
実際の勝どき橋と橋の資料館を見学しているうちにツアー開始時刻です。
見学ツアー : 運転室
まず最初は運転室から見学です。
▲この歩道をまたぐように建つ建物の2階が運転室です。
外階段から上ります。
▲運転室の中には、こうのようなメーターとスイッチ類が並ぶ運転台が設置されています。
ここで隅田川を通る船と晴海通りの人や車の流れを確認しながら操作していたのでしょう。
80年前の最先端機器です。
▲運転台の上に設置されているのは角度計。
橋桁の開閉角度を知る計器です。橋脚内の機器からの電気信号を拾ってこの計器でアナログ的に視覚化するのですね。
今はもう橋はずっと閉じているので鉢は水平を指していて1970年以来動いていないはずです。
▲これは分電盤でしょうか。
やはり電気関係のメーターが並んでいます。
▲スイッチ類はむき出しのもの。
これでガッちゃんとスイッチを入れたり切ったりしていたのでしょう。もう電気は来ていないと分かっていても、絶対に素手では触りたくないです。
▲電圧計(左)と電流計(右)。
▲天井からぶら下がっているのは風向計でしょうか。
これを見ながら風向きが変わるのを少し待とうみたいな制御をしていたのでしょう。
▲勝どき橋の竣工は1940年、昭和15年ですが、電気設備は1939年、昭和14年製です。
こういう電源系は基本的なところは昔と大きく変わっていないのですね。製造者の「小穴製作所」はNEC日本電気の関連会社でしたが今はTDKラムダです。
見学ツアー : 橋脚内部
続いて橋脚内部へ。
▲橋脚には開口部もあって隅田川の水面が見えます。
結構な頻度で観光船も通るので手を振ってみますが、気付いてもらえないですね。
ここからさらに橋脚内の勝どき橋の心臓部とも言えるエリアへ向かいます。そしてここで前述の体重100Kg以下、身長110cm以上という参加制限の意味が分かります。
▲橋脚内部へは高さ3.5mの鉄ハシゴを下りるのです。
安全用にハーネス着用、また軍手も支給されて万全の準備で橋脚内へ。
スカートは避けた方が良いですし、汚れてもよい服装で行きましょう。
▲見学ツアーの案内は「東京都建設防災ボランティア協会」の方々。
橋の開閉の仕組みなども丁寧に説明してもらえます。
▲橋脚内部のほぼ全景です。位置的には隅田川のほぼ水面下。
そこにこんなに大きな空間があって、ここで合わせて2,000トン前後になる橋桁とカウンターウェイトをモーターの力で動かすのです。
▲これは多分橋桁のストッパー、安全装置。
▲右の鉄鋲が打ち込まれているのが橋桁のカウンターウェイトが入っている部分です。
これをモーターからの動力を使って動かすのですね。
▲人力で動かすこともできるようで、このような工具も準備されていました。
見学ツアーを終えて
80年前、錢高組によりすべて日本人により設計と施工が行われて完成した勝どき橋ですが、年月と戦争に耐え橋としては今も現役です。しかもその気になれば今でも動かすことができるというのが凄いです。
▲いつもはすっと通り過ぎるだけの勝どき橋ですが、内部にこんな大掛かりな仕掛けがあるのも感動的です。
そしてこの橋の歴史がそのまま日本の現代史になるのも感慨深いものがあります。
▲橋脚の最深部へ下りる時にいただた軍手はそのままお土産として持ち帰ることができます。
▲橋脚内を見学した後でもう一度「橋の資料館」を見学するとさらに理解が深まると思います。
基本情報
名称 | 勝どき橋 橋の資料館 |
住所 | 東京都中央区築地6丁目20−11 MAP |
最寄駅 | 都営地下鉄 築地市場駅、勝どき駅。日比谷線築地駅 |
開館日 | 火・木・金・土 |
開館時間 | 9:30~1630 |
開館日時などは変更になる可能性があります。
名称 | 勝どき橋 橋脚内見学ツアー |
開催日 | 毎週木曜日 |
時間 | 10:00〜、13:30〜 各回90分 |
対象者 | 小学生以上(小中学生は保護者同伴)、体重100Kg以下、身長110cm以上 |
人数 | 毎回10名程度。応募多数の場合は抽選 |
料金 | 無料 |
申込期間 | 毎月1日〜14日に翌月分の申込受付 |
申込方法 | ホームページから申し込み、申し込み月の22日にメールで結果通知。 |
開催日は除外日があります。申込時にホームページで確認を。
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