神保町の1953年創業の昭和レトロな老舗喫茶店、ミロンガ・ヌオーバ(Milonga Nueva)。常にアルゼンチンタンゴの曲がかかっているタンゴ喫茶で、日本中のタンゴ愛好家なら誰もが知る有名喫茶です。
そして膨大なタンゴコレクションを聴きながら世界のビールが飲むことができるバーでもあります。
新店舗
そんなミロンガですが、ビルの老朽化に伴い2022年12月6日でいったん閉店し2023年2月6日からすぐ近くの新店舗で営業を再開しています。
新店舗は旧店舗から徒歩40歩、(元)鶴谷洋服店さんの隣で昔々は姉妹店のラドリオの一部だった場所だそうです。新店舗の場所はこちらです→MAP
ミロンガ・ヌオーバの公式発表によると「今のミロンガを丸ごと持っていく予定」ということで、新しい店舗がどうなっているのか気になっているファンの方も多いでしょう。
新店舗での営業再開後、さっそく訪問してみました。
▲書泉グランデのビルのほぼ隣、これが新しいミロンガの店舗です。
店頭にはワイン樽が置かれ、ブエノスアイレスの街角にあるバールみたいな雰囲気を出しています。
旧店舗の様子はこちらから。
立地と歴史
神保町のA7出口を出て、知らない人はいない超有名な昭和レトロな老舗さぼうるとさぼうる2のある小道を抜けた突き当りがミロンガの新店舗です。
神保町の交差点から新宿通りを駿河台の方に歩いて書泉グランデの手間の角を右に入っても同じです。
以前は小さい路地に立地していましたが新店舗は比較的大きな通りに面していて分かりやすくなりました。
▲(元)鶴谷洋服店の隣がミロンガ・ヌオーバ。
自販機のある路地を入ると、日本で初めてウィンナコーヒーを提供したことで有名なラドリオ、そのちょっと先にミロンガの旧店舗がありました。
ミロンガの新店舗の場所は少し前まで「アートスポット ラド(LADO)」という貸しスペースがあった場所ですがさらにその前はラドリアでした。つまり姉妹店同士で一周回って同じ場所に戻ってきたのですね。
創業はラドリオが1949年。その4年後にミロンガが誕生しました。その2つの喫茶店がオープンする前に、とある出版社が始めた昼間からお酒が飲める「ランボオ」というお店がありました。その店には三島由紀夫や遠藤周作といった名だたる文豪たちが通ったといいます。
この「ランボオ」が「ミロンガ」の前身です。「ランボオ」が「ミロンガ」となって誕生する時、ラドリオがシャンソン喫茶だったので、ミロンガは当時流行っていたアルゼンチンタンゴを流す喫茶店になったそうです。
アルゼンチンタンゴを流す喫茶店というコンセプトは現在も引き継がれています。
その後、お店の一部改装やメニューの改定などが行われた1995年に、スペイン語で新しいを意味するヌオーバが店名に付け加えられ「ミロンガ・ヌオーバ」とアップデートされました。
その頃から現在の炭火焙煎コーヒーと世界のビールを提供するようになりました。
▲レジの脇の壁にずらっと並ぶアルゼンチンタンゴのレコードコレクション。
歴史があるだけに今もレコードプレイヤーを使っています。オーディオシステムはさすがに現代風です。でもたぶんSPレコードも大量にあるはずです。
店構え
旧店舗に敬意を評し、新店舗の外観もレンガのファサードに変えられています。
▲店内の壁もレンガです。
これ、もしかしたら旧い店舗の外装に使われていたレンガを持ってきたんじゃないでしょうか。
入口に貼られたポスターはアルゼンチンタンゴのマエストロ、オスバルド・プグリエーセです。▼
店内
新しいミロンガの店内は細長く、手前側が客席スペース、奥にキッチンです。
窓際に大人数用のテーブルと2人用の小テーブル。店内中央部にもテーブル席が並んでいます。
写真で見て分かる通り、旧い店舗のものをこちらでもそのまま使っています。
原則として2人以上のお客さんがテーブル席、お一人様は窓際にずらっと並ぶカウンター席になります。入口から入って左側がカウンター席、右はレジやオーディオなどが置いてあります。
カウンター席は10人くらい並んで座れる大きなもので、そのカウンターテーブルもかなり年季が入っています。
これも旧い店舗のテーブルを加工したんじゃないでしょうか。
▲レジ横の棚には書籍やタンゴのCDなどが並んでいます。
空いている時に行ってゆっくり見てみたいですね。
メニュー
メニューもたぶん全く変わっていません。
▲これはコーヒーメニュー。
嬉しいことにお値段も変更なしです。
▲これはスペシャルメニューとフードメニュー。
メキシカン・ジャンバラヤがスパイシー・ドライカレーと名前が変わったようです。
フード系はドライカレー、ピザ、スープ、トーストどれもちょっと値上がりしています。
▲これはケーキメニュー。ドリンクと一緒にオーダーします。
▲店頭のメニューもほぼ同じ。違いはフードの値上げだけです。
オーダー
新店舗への初訪問ということでミロンガブレンドをオーダー。
▲ハンドドリップした炭火珈琲。
壁際には旧店舗でもディスプレイされていた喫茶店のマッチコレクションが並んでいます。
ちなみに、新店舗も引き続き全席禁煙です。
▲今回はビスコッティも併せてオーダー。コーヒーとビスコッティで1,050円です。
壁際のマッチは喫煙可能だった時代の「ミロンガ」と「ラドリオ」。さらに神保町の老舗中華「揚子江菜館」、同じ神保町の「さぼうる」、本郷の名曲喫茶「麦」、御茶ノ水の「穂高」などのものが並んでいます。神保町つながり、老舗つながり、音楽喫茶つながりなど、老舗らしくネットワークが広いことが伺えます。
移転した新しい店舗のミロンガですが、なぜか懐かしいレンガの内装、以前と変わらぬ椅子やテーブル、そしてタンゴが流れる雰囲気といったところは全く変わっていない印象です。
敢えて言えば広く大きな窓ガラスで店内が明るく感じることくらいでしょう。旧店舗からのファンの人もまったく違和感なく過ごせると思いますし、初めて訪問したい人にとっては見つけやすく入りやすくなったことでさらにオススメなレトロ喫茶です。
旧店舗の今
ミロンガの旧店舗までは新店舗から徒歩40歩。
隣の小路を入ってラドリアのすぐ先です。
▲看板も黒塗りされレンガの壁にはテナント募集となっていました。
新しいテナントが入るのか建物自体が取り壊されのか分かりませんが、ミロンガの旧い店舗が見られる残り時間はあまり長くはなさそうです。新店舗を訪問したら旧店舗の姿も目に焼き付けておきたいですね。
ポイント
ミロンガの店内は壁やテーブルなど以前と変わらぬレトロ感覚を再現していて、まさにそっくりそのまま移転した感じです。モダンな内装の貸しスペースを作り変えたので相応の手間がかかっているのだと思います。
そんなこだわりの内装も実は見どころのひとつかもしれません。
もちろんアルゼンチンタンゴのレコードコレクションに変わりはありません。ヴァンドネオンなど店内に飾られているものは、どれもこれもアルゼンチンタンゴに関するものが多く、多くはお客さんからの寄贈だそうです。
神保町には往年の名店がたくさんありますが、移転したミロンガも変わらず魅力的な空間とタンゴを調べを美味しいコーヒーとともに提供してくれる喫茶店です。神保町の喫茶めぐり、名店巡りにぜひ加えておいてください。
あと重要なポイントは 行列禁止 です。開店前に店の前で行列したり、満席時に入店待ちをするのはお断りだそうです。
基本情報
店名 | ミロンガ・ヌオーバ |
住所 | 千代田区神田神保町1丁目3 MAP |
最寄駅 | 神保町駅徒歩約5分 |
定休日 | 水曜 |
営業時間 | 11:30 – 22:30 (休日〜19:00) |
禁煙・喫煙 | 全席禁煙 |
営業時間、定休日などは変更になる可能性があります。